もう20年以上も前の話。
私はアラン・ドロンのサムライウーマンという香水が好きだった。芯のあるヤマトナデシコになったつもりで毎日つけていた。
元カレのときから、今のオットに至るまでずっと。
香水なんてものは自分で猫を飼うようになった10年前からやめてしまった。
ネコチャンは香りを分解する酵素を肝臓に持ち合わせていません。なので精油(アロマ)や香水の類はNGなのです。最悪死にます。
なので、我が家は洗濯洗剤も基本無臭。
さて、つい最近。シャンプーを買いました。
サムライウーマンの香りのシャンプー。
たまには違うのでも…と何気なく選んだシャンプー。
お風呂で泡立ててみると、お、うっすらと確かに大好きだったあの香り⸺
瞬間、走馬灯のように過去の楽しかった思い出だけが私の中を駆け巡りました。
思い出なんて美化されるものだ。
そう、わかっていても。
壊れたメリーゴーランドのように楽しかった幸せだった思い出がぐるぐると止まらないのです。
気づいたら髪を洗いながら子供のようにしゃくりあげていました。
私はあのとき夢見た大人になれなくて、なんだかそれが異様に苦しくて。
思い通りに行かないことなんて、理不尽なことなんて幸せだった思い出より遥かに多いのに。
そうやって大人になってきたのに。
なってきたつもりだったのに。
シャンプーはいつものを買い直して、サムライウーマンは今は洗面台の下に封印しました。
情緒不安定と言われたらきっとそうなんでしょうけど…。
忘れたくて、忘れたくなくて、矛盾した思いを抱きながら生きてるんだなぁ。って。
戯言です。
もう40にもなったというのにね。
そんなつまらない女のしとどに泣いたお話でした。